『YAMAを綴る』

休日は気ままに、各地の山へ行く会社員。

ガムシャラに伊豆稜線をトレランした日

ここ最近モヤモヤすることが続いていた。そして仕事中にふと「なんだか、がむしゃらに走りたいな」と思った。日常から少し離れて自然の中を思いっきり走ったら身も心もスッキリするのではないかなと思い、伊豆稜線トレイルに行くことにした。やりたいことは素直にやってみるに尽きる。

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ということで2024年3月9日いざ、トレランへ。アクセス方法は今回も安定に公共交通機関。

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まず、東京駅から新幹線で三島駅まで行く。乗車時間は1時間くらいだ。事前にEXアプリで新幹線を予約しておいた。出発の10分前には新幹線がホームに着いていたのでさっそく乗車する。

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そういえば、最近コーヒーにハマっていて登山に向かう新幹線の中で必ず飲んでいる。いつか山頂で優雅に豆を挽いて、コーヒーが飲みたいなぁ、なんて景色を眺めながら思っていた。何気なくネットでコーヒーミルを調べてみる。すると意外に安価で買えるではないか。これはもう…ということで、気が付いたらポチっとしていた。近々コーヒーの講座を受ける予定なので基本知識を身に付けて山頂コーヒーデビューをしようと思う。楽しみがひとつ増えた。よし。

そんなこんなしていたらあっという間に三島駅に到着した。次は修善寺駅に向かう。乗車時間は40分くらいだ。ちなみに、伊豆箱根鉄道駿豆線はSuica等のICが使用できない。なので券売機で切符を購入しなければいけない。券売機も現金のみなので乗り換え時には注意が必要だ。にしても久々に切符をみた気がする。思わず記念撮影。

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改札を抜けると既に乗車予定の電車が停車していた。あまり馴染みのない開閉ボタンを押し、ぎこちなく乗車。2両編成の車内は4人掛け仕様だった。わたしは窓側を選び腰掛けた。そして定刻通り動き出す。

車内には学生が何人かいた。部活動に向かっているであろう学生は勉強してたり、音楽を聴いてたり、寝ていたりしていた。全然なんともない風景だったのになんだか青春だなと思った。あのときは気が付かなかったけど、こういう何気ない一瞬一瞬がすべて青春だったんだと思う。

にしてもそんなことを思えるようになったなんて…わたしも大人になったんだなぁ。

と、まぁそんな感じで勝手に青春を感じていたら修善寺駅に到着した。ここから次は東海バスで天城峠(登山口)に向かう。バスに乗る前に、駅構内のロッカーに着替えなど不要なものを預けた。

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無事に乗車。乗車時間は45分くらい。わたしの前の席におそらくホームステイか何かで日本に来ているであろう学生と受け入れ先のお父さんが座っていた。お父さんがカタコトな英語でずっと話しかけていた。バスの中では寝ようかなと思っていたもののなんとなく面白くてずっとその話を聞いていた。ステイ先で登山に行けるなんて羨ましい限りだ。そんなこんなで勝手に心の中で会話に参加していたらあっという間に天城峠に到着した。

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時刻は9:00ちょうど。ここから約32キロ先にある、だるま山高原レストハウスまで向かう。終バスは17:30。これを逃すと修善寺駅までプラス11キロ歩かなければならない。ということは、なんとしても8時間30分以内にゴールせねば…。

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ちなみに普通に歩いた場合の平均タイムコースは13〜15時間だ。今日はトレランなのでかなり身軽だし、体調も整えてきているので足取りは軽い。軽くストレッチをしてYAMAPを起動して、いざ出発。

YAMAPはトンネルの方を指している。ということで、さっそく全長800mのトンネルに入る。車だったら一瞬で抜けられるのに歩いていると長く感じる。途中から軽く走りだす。そして無事にトンネルを抜けた。なんとなくYAMAPを確認。すると…

方向が間違っているではないか…‼︎

トンネル内ではGPSが途切れてしまっていて気が付かなかったが、どうやらトンネル脇に登山道があったらしい。これは…痛恨のミス。ただでさえ、時間がないというのに!

ということで全長800mのトンネルをダッシュで戻る。バス停まで戻った頃にはしっかり身体があったまっていた。謎に1.6キロの十分過ぎるほどのアップを終えたわたし。今日はもう、無敵になれるような気がしていた。

まぁ、そんなアクシデントは後日、笑い話になるのでこれも経験だと自分に言い聞かせる。そしてしっかりトンネルの脇にあった登山道から改めて入山。

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ここからはひたすら山の中を歩く。この日は天気が良く木漏れ日がとても気持ちよかった。昨日に寒波で都心でも雪が降っていたので登山道が凍結していないか心配だったが、全然大丈夫だった。

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そして順調に進んで行く。平坦な道はトレランし、スリリングな橋や歩幅が狭い道は慎重に歩く。

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登り始めはわりと森の中を走る感じだったが、少しずつ稜線や富士山がチラっと見えるようになってきた。

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そして一つ目の山、三蓋山。

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 だれもいない自然の中を自分のペースで走っていく。一人で黙々と走っていると、自分の身体の声が良く聞こえる。例えば、左足太ももの方が少しだけ疲労しているなとか。
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自然の中で研ぎ澄まされているからか日常生活のなかでは聞こえない内側の些細な反応に気付けるのもまた面白い。

そして二つ目の山、猫越岳。

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少しだけ雪が残っていたりしたけれど、とくに凍結などもしておらず、問題なく通過できた。

そして三つ目の山、後藤山に到着。

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順調に走り続けること3時間。だんだん開けてきた。

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少し疲労し始めていたけれど、ご褒美のような景色が見え始めアドレナリン大量噴出。そしてついに伊豆稜線スカイラインにぶつかった。

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登山しながら、しかも海も眺められるなんて眼福でしかない。まるで学生時代のスペイン巡礼をしている時のようだった。

四つ目の山、魂の山。

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なんだか山頂名に喝を入れられたような気がした。

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しかし、気合いを入れ直したのも束の間、意外とアップタウンが多い…。一気に丘を登っては降っていく。と思ったら、また次の丘がやってくる。そして爆風。

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遮るものがない絶景がゆえに、冷たい風が身体を冷やしていく。意外と体力が削られていく。

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でもこの壮大な景色に気持ちを支えられながらなんとか進む。

そして五つ目の山、棚場山。

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やはり疲労感は拭えないが、その度に景色に救われる。

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海に向かうこの道は巡礼最後のスペイン最西端、フィニステーラ岬に似ていた。

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↑スペインの岬。いつか…いや必ず、またあの地へわたしは行く。(謎の宣誓)

そしてさらに歩き続けると車道にぶつかった。しばらく、かっ飛ばす車やバイクの脇を歩く。疲労が溜まった足にコンクリートの斜面は応える。

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文明の力が羨ましい…。ヒッチハイクしたくなる気持ちを抑えて黙々と歩く。ここら辺からはもはや体力との戦いというよりは精神力との戦いだ。

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最後らへんは車道を歩いたり、山道に戻ったりを繰り返していた。

そして六つ目の山、伽藍山。

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さらに進んでいく。七つ目の山、古稀山。

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八つ目の山、達磨山。

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そして最後、九の目の山、小達磨山。

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これでようやく全ての山頂は通過した。ここからゴールのバス停までは約30分。バスの時間まで全然余裕がある。思いのほか良いペースで走りきれそうだ。

そして、ここら辺で安堵したからか一気に身体に疲労がやってくる。めちゃくちゃ重たくなった足を一歩、また一歩前に前に出し続ける。

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最後の分岐を曲がると、小さいゴルフ場のような道だった。整備された芝生の斜面を一気にくだっていく。まるでウィニングランのようだな、なんて思ってニコニコしていたら、最後の最後で登り坂がきた。人生そんな甘くないぞってか。くっ。

そして歯を食いしばって最後のランニングしていたら、シカの群れに遭遇。ドタドタと走っていたからかシカ達がかなり驚いていた。こりゃ失敬。

そしてやっと…

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だるま山高原ラストハウスに到着。無事に走り切った嬉しさと一刻も早くコーラが飲みたい一心で建物の方へ向かう。

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自販機で飲み物を買って、展望エリアに行ってみると、富士山がドドーンと見えるではないか。これは最後のご褒美だなぁ、なんて思いながら爆風の中コーラを流し込む。シュワシュワした泡が喉を通り胃に沁み渡る。もはや、内臓が喜んでいるんじゃないかレベルで美味かった。

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休憩するのも束の間、次は一気に冷え始めてきた。しかし、バスが来るまで45分ほどある。ひとり凍えていたら「建物の角なら寒くないよ」とお兄さんが声を掛けてくれた。お兄さんオススメの角に行ってみると、既に数人の登山客がいた。そこからバスが来るまで雑談をしながら寒さと戦った。今思えば、このバスが来るまでの時間がなんだかんだ一番辛かった気がする…。笑

そういえば、今回は両足首に捻挫防止のテーピングを巻いていたからか足首がいつもより安定していた気がする。これからは事前のケアも丁寧にしていこうと思う。よし、また一つ成長できた。

まぁ、そんなこんなでトレランタイム7時間44分、距離34.4キロ(内1.6キロはトンネル)無事に完走!帰宅してからはお家の近くにある居酒屋さんでお疲れさまビールをして寝ましたとさ。

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それでは、また。

『山に関連するお話を綴る』