福島県と山形県の県境にある『西吾妻山』に行ってきた。今回の登山の目的はスノーモンスターを見ることだ。まだ、見たことのないスノーモンスター(雪を被った木々)を拝むべくわたしは登山に向かった。
まず、アクセスについては以下の通り。
行き:郡山駅🚃→猪苗代駅🚌→スキー場
帰り:グランデコホテル🚌→郡山駅
◯行きの電車
◯行きの無料シャトルバス※要事前予約
アクセス | EN RESORT Grandeco HOTEL
◯帰りのバス
福島バス物語 - No.111 グランデコスキーバス(郡山駅前⇔グランデコ)【当日往復】
今回の山は福島県にあるグランデコスノーリゾートのゲレンデからアタックする。公共交通機関だけでゲレンデまでアクセスできるのが本当に有り難い。ちなみに、郡山駅とスキー場の往復バスプラン(有料)もあったのだが、滞在可能時間を考慮し、行きは猪苗代駅発の無料シャトルバス、帰りは有料の郡山駅行きを利用することにした。
2024年2月4日(日)7時前の電車に乗り猪苗代駅へ向かった。朝の郡山駅はそんなに人がおらず閑散としていた。5分前にはホームに電車が到着しており、ポツンと停車していた。
運行間隔は1時間に一本らしく、車両ドアの開閉は押しボタン式。ひとつひとつが都心とは異なり、新鮮だった。車内に乗り込むと4人掛けのボックス席とその横に2名掛け席がチラホラある。とりあえず2名掛け席に腰掛けた。ここから40分くらい電車に揺られる。出発してからは駅で買っておいたホットコーヒーを飲みながらボーッと景色を眺めていた。
7時35分、猪苗代駅に到着した。無料シャトルバスの発車時間は8時10分。約40分もあるので、コンビニへ登山時の食料を買いに行くことにした。早速マップでコンビニを調べる。
…あれ、近くにコンビニがない。なんとコンビニまで駅から片道約1キロもあるではないか。てっきり、駅の周りにはコンビニがあるものだと思っていた。
そうして、わたしのバス乗車までの余裕は無事に消滅したのであった。
なんとか出発5分前に駅まで戻ってこられた。無事に乗車できて良かった。ここからゲレンデまでは40分ほどの道のり。定刻通りに出発したバスの中でサンドイッチを食しながら車窓からの眺めを楽しんだ。
サンドイッチ片手に景色を眺めていると、とある湖に出た。よく見てみると湖は凍っていて「寒い地域なんだなぁ」なんてぼんやり思った。そして、あっという間にスキー場に到着した。
チケットカウンターでゴンドラ往復券(1400円)を購入。装備を整えてさっそく乗車する。ここから標高1400m地点まで一気に上がる。ちなみにこのゴンドラは1秒で3m進むらしい。…恐るべし文明の力。
ゲレンデは快晴で整備された雪と空のコントラストがとっても綺麗だった。また、朝イチだったからかゲレンデは空いていて広々としていた。
ロープウェイで1400m地点に到着。降りたところにわりと登山客がいて一安心。
みんなアイゼンではなく、やはりスノーシューを履いていた。わたしも数年前に買ったものの履く機会がなかったスノーシュー持ってきていたのでさっそく装着する。今日はちゃっかりスノーシューのデビュー日だ。履き心地としてはアイゼンよりも断然大きいので少し歩きづらい感じ。しかし、このスノーシューがのちに大活躍するのであった。
準備が整ったのでYAMAPを起動させスタートする。まずは、ゲレンデ脇を歩いてゲレンデトップまで向かう。昨日はスノボーしていたので、リフトで楽々と登りまくっていた。しかし今日は歩いて登らなければならない。圧雪されたゲレンデは比較的登りやすかったものの、暑さもあり少しだけしんどかった。文明の力が恋しくなった瞬間だった。
汗ばんできたので、ゲレンデの途中でインナーを一枚脱ぐ。登ってきたゲレンデを振り返ると綺麗な景色が広がっていた。
30分くらい登ったところでゲレンデトップに到着。ここからは森?林?のなかを歩く。背の高い木々の間を通過していく。
にしても晴天で気持ちがいい。登山道はしっかりとトレースが付いていたものの進んでいくにつれて雪の量が増していった。
たまに登山客とすれ違いながら進んでいく。1時間くらい歩いたところでだいぶ景色がひらけてきた。
少しだけ雲が出始めていたが、まだまだ天気は晴天だった。さらに歩くこと10分ほどで視界が開けた。
なかなか圧巻だった。雪でグラデーションされた山々は美しかった。少し雲が出始めていたが、開けたところに出た瞬間はまだ持ち堪えてくれていたので素敵な景色を見ることができた。何枚か写真を撮り先へ進む。
そしてひとつ目の山頂である西大巓に到着。山頂に着いた時にはしっかりホワイトアウト状態だった。真っ白な景色の中、山頂の標識が少しだけ顔を出していたので記念に撮った。
先ほどの青空が嘘のように、周囲は真っ白になっていて久しぶりのホワイトアウトだった。天候が悪化し過ぎる前に次の山頂へ向かうことにした。ここからさらに40分先にあるのが本日のお目当てである西吾妻山だ。
先へ進んでみると人がいないのか、それとも見えていないのか白一色の世界だった。ふと「孤独ってこういう感じなのかなぁ」なんて思った。そしてこの辺りから風が強く吹き始めた。風が強いからか一瞬だけ、太陽が見えた瞬間に納めた一枚は幻想的だった。
このあとはホワイトアウト状態が強くなっていった。一応トレースの跡はあったものの、道を間違えたであろう形跡だったり、途中で途切れてしまっていたりで結局、GPSを頼りに歩くことにした。そして40分ほどで、本日二つ目の山頂である西吾妻山に到着した。
山頂は標識など見当たらず、GPSで確認する限り、この写真の位置が山頂のようだった。この時には髪の毛も凍り始めていて、風もかなり強かったため体感温度ではマイナス20℃くらいにはなっていたと思う。
山頂には着いたものの「なんか、山頂感がないね」と近くにいたソロの方と話した。そして15分ほど歩いたところに神社があるので、ひとまずそこを目指すことにした。
歩き始めてすぐに突然、青空が現れた。
真っ白だった世界に突如、青空が現れる。本当に一瞬の出来事だった。その時に見たスノーモンスターは、これでもかというくらい迫力があった。自然が創り出した芸術はとても美しく、それと同時に脅威を感じさせられた。
本当に一瞬だけだった。この後、30秒も経たずしてあっという間にホワイトアウトに戻った。しかし、この一瞬があったから心を震わせることができた。来て良かったと思った。
この時にはホワイトアウトに加え、周辺を見渡してもトレース跡はどこにもなかった。GPSを頼りに新たな道を開拓しながら歩く。そして神社にたどり着いた。
神社はしっかり雪の中に埋まっていた。着いた時には、髪の毛やまつ毛は全て凍っていた。凍てつく寒さのなかでひっそりと眠る神社がとても神聖なものに感じた。
少ししてから先ほど山頂で話したソロの方も違う方向からやってきた。お互いに顔を見合わせ「しっかり、埋まっちゃってるね」と一言。ホワイトアウトも抜けそうになかったので神社に手を合わせてから一緒に下山するとにした。
トレースは完全に消えてしまっていたため、2人でGPSを確認しながら道を開拓した。ここらへんはかなり雪が積もっていて、道の下にはたくさんの木々が埋まっている。スノーシューのおかげで沈み込まずに雪の上を歩けている。その感覚が何故か不思議だった。40分くらい一緒に歩いたところで他の登山客の姿が見えた。
しばらくホワイトアウトで且つトレースもない道を歩いていたので、人の姿を見た時は正直ホッとした。
わたしは、日常生活から一時的に離れるために山に行く。しかし、山の中にいると不安とか恐怖を感じることがある。きっと、日常生活でしかあの安心感は得られないのだと思う。
この後は、ひとつ目の山頂である西大巓に戻り、そこからはしっかりとレースのついた道を降りた。いつの間にか一緒に歩いていたソロの方とははぐれていてまた1人で歩いた。この辺りではホワイトアウトもだいぶ抜けてきて、青空はなくなっていたものの視界は良好になっていた。
そして、安心し始めたタイミングで、自分のスノーシューを踏んづけてしまった。バランスを崩して顔面からツリーホールにダイブ。キンキンに冷えた雪に顔面からダイブしたお陰で目が覚めた。ホッとした時が危ない。ソロだからこそ集中力が人一倍必要になる。身に沁みた瞬間だった。
それからは顔面からダイブすることなく降りた。ふかふかの雪の上にわたしが通った跡が残っていた。そして無事にゲレンデまで戻ってきた。
登山者が歩くゲレンデは、全然人がいなくて、これは恒例のシリセード(尻滑り)ができると思った。ピッケルをだして、いつでもストップがかけられる状態にしてから一気にシリセードでゲレンデを降りた。お尻の冷たさと、一気に下れる爽快感で私の心はキンキンに冷えた。
そして予定通り14:00に下山したのであった。ゴンドラで降りてからは、インフォメーションセンターで温泉に入れる場所がないか聞いてみた。5分ほどのところに星野リゾートが運営しているホテルがあるとのことで、シャトルバスを手配してくれた。また、帰りのバスの始発がホテルだったようで、バス会社に電話して、乗車する場所を変更した。そうこうしているうちにバス(バン)が到着し、ゲレンデ横のホテルまで連れて行ってくれた。
エントランスをくぐると、正面が一面のガラス窓になっていた。そこから見える雪景色がとっても綺麗だった。星野リゾートの良さってこういうところなんだろうなと思った。
温泉は、内風呂と露天があり、雪を見ながら入る露天は最高だった。お風呂を出てからは自販機でビールを買って、お土産屋さんでお煎餅を買った。エントランスのガラス窓から雪景色を見ながらビールと共に本日の健闘をたたえた。
そして一息ついたところで郡山行きのバスがきたので乗車して帰路に着いたのであった。
今回の登山を通じて、スノーシューの偉大さに気付くことができた。アイゼンにはアイゼンの良さがあり、スノーシューにはスノーシューの良さがある。どのタイミングで使用するのかをきちんと学ぶことで、ギアの能力を最大限に引き出せるんだろうなと思った。
また、今回の超絶ホワイトアウトを通じて、そろそろココヘリを契約しようと思った。ソロで登山しているからこそ、人一倍慎重にならなければいけないし、そういう行動を起こさなければならない。
登山年月を重ねていくたびに改善点と、次なる挑戦が見つかっていく。これだから登山はやめられない。だからわたしはまだまだ登ります。
それでは、また。