『YAMAを綴る』

休日は気ままに、各地の山へ行く会社員。

山の中のひとりごと(八ヶ岳②)

昨夜は、程よい疲労感と美味しいご飯のおかげで、ぐっすりだった。しかし、8月といえど、山の夜は少し肌寒い。一度だけ目が覚めた。少し外の様子でも見てみようと、わたしは山小屋の外に出た。

この日の夜空はあまり星が出ておらず、うっすら遠くに街明かりが見えていただけだった。なので、わたしはその街明かりを頼りに少しのあいだ、写真を撮っていた。

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この日は全然、風がなかった。夜の八ヶ岳は、深い静けさが漂っていた。次第に無音の音が耳のなかに響いてきた。(耳のなかがボォーーってなる感じ。)わたしは、神経を研ぎ澄まし、その不思議な感覚を楽しんでいた。しかし、あっという間に冷えてきたので一旦撤退した。夜の山は、容赦なく芯から身体を冷やしていくらしい。

それからもう一度眠りに就いた。少しして夜明け前になった。すると、続々に宿泊客が外に出はじめる。朝日を拝むためだ。わたしも同じように外に出て少し離れた岩に腰掛けた。このとき気が付いたのだが、もうこの時間帯にはあの不思議な感覚はどこにもいなかった。

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そして結局この日は、朝日が出なかった。けれど、わたしは満足だった。夜の八ヶ岳の不思議な感覚を満喫できていたから。

朝ごはんは、カップラーメンを食べた。宿泊予約時に朝食付きにしていなかったので、みんなが食堂に向かうなか、わたしはひとり、カップ麺をすすった。朝の5時前に食べるカップ麺。…美味いに決まってる。ちなみにわたしは辛いものが好きなので、お腹を満たしつつ、一味唐辛子で胃を温めた。

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朝食も食べ終えたことなので、パッキングし直し、いざ2日目の登山開始。早めに宿をでたからか、朝イチの稜線は貸切だった。そして、日の出は拝めなかったけれど、気付けばいつの間にか太陽が出ていた。

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思いっきり深呼吸しながら歩く稜線。朝日も、朝のスッキリした空気も、鳥のさえずりも、ひとつひとつが本当に心地良い。まるでデザートを味わっているような気分だった。
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そして、歩いてきた道を振り返ると昨日泊まっていた赤岳山頂荘があっという間に遠くなっていた。

こういうとき「一足の積み重ねって偉大なんだな」としみじみ思う。登山していると小さな積み重ねが、目に見えるカタチで実感できる。達成感を味わいやすいんだと思う。大人になるとなかなか味わえないあの達成感を、登山では何度も味わえるのである。これもまた、登山の面白さのひとつだ。

さて、そんなこんなしていたらあっという間に本日ひとつ目の山頂「横岳」に到着。貸切だったので稜線を眺めながら少しだけ休憩を取った。

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そしてまた歩き始める。今日は天気が良くてとても気持ちが良い。ここら辺までくるとたまに他の登山客とすれ違うようになる。そして当たり前のように挨拶を交わす。日常生活では、知らない人と挨拶を交わすなんてあり得ないけれど、山では当たり前に挨拶する。当たり前って、本当に不思議だ。

二つめ目の山頂「硫黄岳」に到着。硫黄岳は山頂が広い。なので休憩するにはもってこいの場所だ。といっても、わたしはまだまだ先があるので休憩はせずに次の山へ向かう。
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ここまで歩いていると、アドレナリンがでているのか無限に歩けるようになってくる。無の境地っていうやつだ。気付けば次の山頂「天狗岳」に到着していた。
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天狗岳に着いたのが昼前だったからか登山客が多かった。なかでも印象に残っているのは、中年女性のグループだ。その中の一人が天狗岳までかなり苦労して登ってきたからか必死の形相で山頂の標識にタッチしていた。(もはや這いつくばっていた…笑)思わず、「よかったら、皆さんの写真撮りますよ!」とお声掛けし、さりげなくあの女性の健闘を讃えた。

そしてさらに先へ進む。一度森の中にはいる。ずっと稜線にいたので久々の森林は良いアクセントだった。そしてあっという間に本日最後の山頂「にゅう」に到着した。

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なんて可愛らしい山頂名なんだろう。しかし、この可愛いらしい名前とは裏腹に山頂付近はゴツゴツした岩肌なのだ。これは…いわゆる"ギャップ萌え"というやつなのか。(多分このギャップ萌えをできる人あんまりいないと思う。自覚アリ。)そして、白駒池を通り無事にバス停まで下山した。

そういえば、バス停の売店に白駒池周辺のコケをモチーフにしたキャラクター「コケ丸」というやつがたくさん売られていた。どうやら白駒池周辺あたりの北八ヶ岳は"日本三大苔の森"らしく、コケ丸は、日本の固有種であるムツデチョウチンゴケ?がモデルになっているとか。コケ丸を我が家に迎え入れることはなかったが、またいつかコケ丸に出会えたら、と思う。

↓コケ丸のTwitter

https://twitter.com/kokemaru001

 

さて、そんなこんなで今回の八ヶ岳縦走は無事に終了した。今回の山業では、前回のブログで書いた"登山靴"が個人的に印象に残った。赤岳山頂荘にあった大きな下駄箱。そして、そこに収められていた様々な登山靴。きっと、ソロ登山だったからこそ目に留まったのだと思う。何度登りにきても毎回新しい発見や出会いがある。これだから登山はやめられない。また、過去の山話を含め、気が向いたら綴って行こうと思う。

それでは、また。

mayuko-m.hatenablog.com

 

 

『山に関連するお話を綴る』